片手にラヂヲ♪ ホーム短波ラヂヲの世界へのお誘い「楽器」としてのラジオ?!ネットで"shortwave"の音楽♪ 3

作成日:2007/01/03
最終更新日:2011/02/20

「楽器」としてのラジオ?!

小ネタ特設コーナー

ネットで"shortwave"の音楽♪ 3

"Internet Archive"で聴く「短波」の音楽

"Internet Archive"(http://www.archive.org/)では,様々な音楽作品が公開されています。

そこで"shortwave"と打ち込んでみると,"短波"を使った音楽もかなり出てきます("短波"で放送された番組や受信音なども多数出てくるのですが…)。
また,様々な音楽にインスピレーションを与えている暗号放送の音源,"The Conet Project - Recordings of Shortwave Numbers Stations"もここで公開されています。(別項参照)

それらの作品の"短波"との関わり方は様々ですが,ここでは私(ごた)が気になった作品をいくつかピックアップしてみます。


K M Krebs 833-45 - Distance (1999)

"K M Krebs"のデビューEPだそうで,全6曲。
全編ノイズをサンプリングしたと思しき音響が続いています。この手のものとしては,比較的リズミカルなツクリです。

ラジオの音の比重はそう高くないのですが,随所で短波の受信音らしい音声,信号音が聞こえます。前半3曲は,「ぷちっ」「ぷつっ」という,アナログディスクのスクラッチノイズのような音も通して聞こえています。


Kaputt Kurzwellen "KKurzwellen"

"Kurzwellen"(ドイツ語の「短波」)とは,ストレートなネーミングです。(^^;)

紹介文からは,男性2人と2台のラジオで即興をするという以外に詳細はわかりません。実際に作品を聞くと,音を歪ませているものの,短波ラジオしか使っていないのはわかります。
トラックによっては,短波だけでなくAMやFMからも音を録っているのもわかります。音の歪みさえなければ,John Cageのラジオを使った作品のようにも聞こえるところもあります。

"1"(12'21")は,いきなり短波のチューニング音,さらに信号音で始まります。じきに歪んだ音になって曲は進みます。ラジオをデジタル機器に近づけたときの「しゃーっ」というノイズらしきものも聞こえます。とにかくやかましいです。(^^;)
"2"(2'47")は,冒頭オペラのアリアのような音楽が流れ,さらにチューニング音が入ってきますが,ここでは短波だけでなくFMの音も入っているようです。歪み具合は"1"ほどではなく,John Cage作品のようにも聞こえます。
"3"(9'32")の前半は,比較的歪みの少ない穏やかなチューニング音で進行しています。後半になると音がかなり歪んできます。何も信号のないところの音が絡む最後の1分間は,ちょっと瞑想的です。
"4"(6'16")は,終始歪んだ音がしています。中でも,デジタル機器から出ているノイズらしい,一定のシークエンスを持った音がメインで聞こえています。
"5"(10'17")も歪んだ短波の受信音,チューニング音で構成されていますが,最後の最後にFMの音らしき,クラシックのオーケストラの音が出てきてシメです。


Anonymous Paulson "Mike, India, Whiskey"

約7分の短めの曲。
冒頭,アメリカの標準電波局"WWV"の男性アナウンスの声で始まります。アナウンスをよく聞くと停波の告知らしく,"January 24, 1968"という日付も聞き取れます。
まもなく「暗号放送」の音がいくつか入ってきます。タイトルの由来になった"Mike, India, Whiskey"のフレーズが繰り返されます。
それらの音がだんだん錯綜していき,さらにシンセのメロディー,"WWV"の信号音なども入ってきてカオス状態になっていきます。
"WWV"についてコメントもあって「核戦争にあっても局は機能し続けるけど,誰もそれを耳にしていない」なんてことを夢想するのだそうです。そんな終末の描写なのかと言えば,そういう感じもします。


Trailer for Hades "TFH Untitled 13/10/01"

ギターと短波のインプロヴィゼーションで,44分の大作。

終始持続的な音で構成され,音が厚くなるところもありますが,瞑想的と言える作風です。
ギターの音は,ごく長く引き延ばされた「ぼぉ〜〜っ」「ひゅぅぅ〜」という感じの音やフィードバック音などです。
その隙間を埋めるように,短波のノイズが入ってきます。
短波の音は,ノイズばかりを慎重に選んでいるようで,すぐそれとわかるようなチューニング音や音声,信号音などはあまりありません。(終盤に,一瞬かなり深いエコーをかけられた状態で,音声らしい物が聞こえるところはありますが。)


Unproduct
Radio Canvas I-IV (2002)

"I"(40'44")は,冒頭から変調のかかったラジオの音が聞こえてきます。
さらに「ぶ〜ん」という電源のハムノイズのような音が重なり,さらにノイジーな金属的音が被ってきます。
中盤は,怒濤のように流れ出る歪んだ音声と「ぶ〜ん」音をメインに曲は進み,最後は再びノイジーな金属的な音に覆われ,そこに歪んだラジオの音も入りシメです。かなりやかましいです。^^;A
40分の大作ながら,最後の10分間は沈黙です。ほぼぴったり10分間なので,意図的なものだとは思いますが…。

"II"(14'24")もやかましいことには違いありません。(^^;)
冒頭は,規則的なシークエンスを持った信号の音から始まり,3分ほどして,"I"と同様に歪んだラジオの音が入ります。聞こえてくる歪んだ歌は,インドの映画音楽ではと。
最後の1分間は静かになり,暗号放送らしいアナウンスも聞こえます。

"III"(23'26")の前半は,音が歪みまくった"I","II"とはうって変わって,比較的クリアな民族音楽の弦楽器の音をサンプリングしループにした音がメインです。「きーーっ」という,放送が混信したときに発生するビート音も伴っています。
10分目でループの音量が下がり,歪んだ受信音も入ってきます。そして12分目には音量が上がり"I","II"と似た音になってきますが,民族音楽のループは聞こえ続けています。

"IV"(19'21")もうって変わって,小音量の重低音のドローンで始まります。
2分半頃に,笛の音のようなループ音がそろそろと入ってきます。さらに様々な短波の受信音らしき音が入ってきますが,音量は抑えたままです。最後の2分間はまた沈黙で,終始瞑想的なムードです。


Wisteriax -"Static Voyage"

短波ノイズとチェロの組み合わせで,旅と名が付くだけあって,計約74分の大作です。(公開されているファイルは17に分かれていますが,間を空けずつなげる旨指示があります。)

冒頭から,ラジオの音をシンセで歪ませたと思しき音から始まります。
やがて,変調されノイズ化した音が渦巻き,チェロの即興演奏(ときどき,意外にきれいな旋律も奏でたりします^^;),時折現れるラジオの音とともに曲は進んでいきます。


"Electric Enigma: The VLF Recordings of Stephen P. McGreevy"

http://www.archive.org/details/ird062

"Irdial Discs"は,短波の暗号放送の録音"The Conet Project"のリリースで知られていますが,これは1993〜95年の間にアメリカ,カナダ各地で収録された,VLF(3〜30kHz)と呼ばれるごく低い周波数帯の,電離層より遙か上空の磁気圏に由来する電磁波ノイズの録音です。
そして"Conet"同様,Internet Archivesでの公開もされています。

VLFという周波数帯は,中波(AM),長波(LW)より低い,通常のラジオでは受信できないもので,地震予知などでも研究対象となっています。
受信機は,録音したStephen P. McGreevy氏(コールサインN6NKSのハムでもあります)自作のものです。
普通,なかなか耳にできない周波数帯の音だけに,ラジオが好きな筆者的にも興味深いものです。

収録されているのは,主に2種類の音で,"Whistler"と呼ばれるとおり口笛に似た「ひゅぅぅぅぅ」という感じの音と,"Chorus"と呼ばれる,より複雑な音響を感じさせるもの。
受信したものを,ほぼそのまま収録しているようで,ノイズらしい「パチパチ」音もいっしょに聞こえていて,音楽的というよりはドキュメント的です。

ただ,ノイズっぽい持続音は,"NASA Space Probe Recordings"などと似た感じもするし,磁気圏に由来する電磁波ということで,イマジネーションもかきたてられます。

(2010/02/15)

John Duncan "abeattie23"

http://www.archive.org/details/270JohnDuncan

短波ラジオを多用するJohn Duncan氏("Phantom Broadcast"参照)の作品が,Internet Archiveにも。

最初に,ハンマーで金属をリズミカルに叩くような短めのシークエンスが繰り返されています。短波を聞いていれば,耳にしたことはある信号音です。
"Phantom Broadcast"では,短波の音は,すぐそれとはわかりにくいくらいに加工していましたが,こちらはすぐ短波の音だとわかります。

さらに,ヒリヒリと高く響く,かなり高めにイコライジングした短く繰り返す信号音も入ってきます。
16分目には,最初のハンマーっぽい音は消えて,23分目あたりから信号音の背景にノイズっぽい音が少しずつ音量を上げて入り,最後はまたヒリヒリいう信号音だけになって終わり。

それにしても,Duncan氏の作品は,これだけ長い作品を聞き終わっても,耳にした音以上の印象,後味のようなものが(良い意味で)ありません。上記のように描写するしかないほど冷徹です。(^^;)

(2011/02/20)

(c) 2008-2011 gota

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