片手にラヂヲ♪ ホーム > 短波ラヂヲの世界へのお誘い > 「楽器」としてのラジオ?! > John Duncan |
短波絡みで音楽を作る人は,まあ多少なりとも変わった人なのかもしれないのですが^^;,この人の仕事はひときわ変わっています。 この人,John Duncanは1953年アメリカ生まれ。キャリアは1970年代に画家として始まり,音楽のほかインスタレーションやパフォーマンスも手がけています。最近はイタリア在住ですが,1980年代には日本(東京の町田らしい)に数年住んでいたこともあります。 しかし,そのパフォーマンスたるやカゲキです。 音楽では短波ラジオが多用され,重要な役割を果たしています。ディスコグラフィーには,ソロのほか共作も多く,アコースティック楽器を使った作品(これまた「葬送の合唱団」"funeral choir"を使った"The Ruud E. Memorial Choir[1996]"なんて曲まである)もあります。 70年代末頃に短波を使い始めた頃は「夢で聴く音のようだった」と言います。 また,短波は理想的な楽器だと言い,シンセサイザーより非常に複雑な音で,常に違いがあり予測不能なもの,と評価しています。 ここでは,数ある彼の短波を使った作品の中から,いかにもラジオ絡みで,かつ怖そうな芸風^^;を反映していそうなタイトルの"Phantom Broadcast"を聴いてみます。 本作は,スウェーデンで録音(CDのクレジットには"Received 18.04.2002"とあります)され,2002年9月,ストックホルムで6チャンネル再生で初演されています。 曲は一つの音を延々流し続け,微妙に変化させていくタイプの音楽,いわゆるミニマルです。 最初は,混信で起こる「ピー」という雑音(ビート混信)らしき音も聞こえます。しかし,事前に情報がなければ短波の音とはわからないくらいに,加工は徹底しています。短波の音を徹底して加工することでは,Tod Dockstader(別項参照)の芸風に近いものもあります。 しかし,その鐘のような音はノイジーなものではなく,和音,しかもメジャーコード(長調)のハーモニーを感じさせるものです。 トーンは少しずつ変化していき,途中男性コーラスや女性コーラスのような音も入ってきます。また,同じ音を延々耳にすることで,ないはずの音まで錯覚してくるようです^^;。いずれにせよ,前述のとおり終始音はハーモニックです。 同様に短波の音を研ぎ澄ました音響を使う音楽家は他にもいますが,ただ,何かが違っています。 形容しがたいのですが,作曲者も聴き手も深く自分自身に沈み込み,しかも注意をそらすことを許さないような感覚があります。少なくとも,先に名前を出したDockstaderの音楽に感じられるようなユーモアは,その音楽からはあまり感じられません。 [参考サイト]
(2006/05/15) |
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