片手にラヂヲ♪ ホーム短波ラヂヲの世界へのお誘い「楽器」としてのラジオ?!Wilco

最終更新日:2005/09/05

「楽器」としてのラジオ?!

Wilco

"Yankee Hotel Foxtrot" (2002)

1. I am trying to break your heart 2. Kamera 3. Radio cure 4. War on war 5. Jesus, etc. 6. Ashes of American flags 7. Heavy metal drummer 8. I'm the man who loves you 9. Pot kettle black 10. Poor places 11. Reservations

アメリカ盤 Nonesuch 7559-79669-2
国内盤 ワーナーミュージック・ジャパン AMCY-19025

いやいや,久々に出ました,短波ラジオ絡みの大玉が。

Wilcoは,90年代半ばから,"オルタナ・カントリー"という特異な分野で名をあげていた,アメリカのバンドです。(最近は"カントリー"の要素は,かなり後退していますが。 )

タイトルの"Yankee Hotel Foxtrot"は,無線通信でアルファベットを正確に送るときに使う「フォネティクスコード」(日本語で言う「朝日のあ」,「いろはのい」とかいうやつです)で"YHF"を表す言葉です。

"YHF"は,短波で送信されている,イスラエルの諜報機関"Mossad"の"number station",つまり暗号数字などをアナウンスする局の1つの名称です。

各種情報によると,メンバーのJeff Tweedyがあるきっかけで,短波の"number station"に興味を持ち,それに触発されたアルバムとのことです。

ちなみに,Tweedyがそんなものに興味を持ったきっかけは,"Music 365"のStephen Dowlingという人物とのインタビューで,Dowlingが持っていたという,諜報機関の送信の録音4枚組CD ("four-cd set of nothing but recorded transmissions intercepted from worldwide intelligence agencies")だとのことです。(このCDって何なのか,ご存じの方,います?)

アルバムも,ノイジーな音が曲中や曲の前後にかぶさり,アルバム全体のイメージをつないでいます。
いかにも,ラジオやコミュニケーションがコンセプトにあるのが察せられます。このサウンドは,ミキサーのJim O'Rourke(プロデューサーとしても高名)仕事っぽいですけど。
アルバムの印象は,強いて言えば,現在形"Radio-Activity",あるいは,落ち込みきった"Sgt. Pepper's"のようでもあります。

そして,アルバムのクライマックスは,CDのトラックNo.10,(米盤の終わりから2曲目)の"Poor Places"で,ここで曲中にアルバムタイトルの"Yankee Hotel Foxtrot"をアナウンスする女性の声(合成音声のようですが,実際の受信音でしょうか?)の繰り返しが入り始め,曲が進むにつれ電子音ノイズとともに浮かび上がってきます。(ここ,ゾクゾクきます!)

アルバムのコンセプトのコミュニケーション,という点では,歌詞やサウンドからは,むしろ誤解や断絶などの困難を感じさせ,楽天的なラジオ賛歌ではないのは確かです。
曲のタイトルにも,"Radio Cure"という曲はあるものの,詞やサウンドからすると,かなり皮肉っぽいタイトルです。他の曲でも,"War On War","Ashes of American Flags"など,2001年9月のテロ事件の影を濃く引きずっているのがうかがえます。

また,グループ自体もメンバーの相次ぐ脱退などがあり,そんなムードの中,つかんだ"わらしべ"が「短波」だと考えると,60年代のStockhausen同様,短波ラジオのイメージを探るうえでも,興味深い事例に思えます。

ちなみに,Wilcoの1stアルバムは,"A.M."(1995)と題され,ジャケットにもラジオがデザインされていました。


[参考URL]


"Mossad"の"number station"中の"YHF"については,2844, 3840, 4560, 5820, 7918, 9402kHzなどの周波数が存在するとの情報もあります。いずれもUSB (正確には抑圧搬送波)とのことです。
ただ,私は確認できる形で受信したことはありませんし,日本での受信実績も不明です。

また,Havana Moon "Uno, Dos Cuatro A Guide to the Numbers Stations" (Tiare Publications) では,この局は"Phonetic Alphabet Stations"として紹介されています。

(2002/05/02記)

[追記]

ファンから絶賛を浴びたこのアルバムでしたが,一方でこの暗号放送の音源の利用を巡る問題も起こっていたようです。やれやれ....。

(2004/06/26記)

[追記2]

この暗号放送の音源を収録したCDを入手しました。A^^;

1997年にイギリスで出された,怒濤の4枚組,総トラック数は156(!),72ページのブックレット付きです。

収録局は,欧米で受信されたものが中心です。使用言語は,英語,ロシア語,スペイン語,東欧諸語などが主で,ほかにも中国語(有名な台湾の「星星広播電台」もある),モールス信号,意図不明の信号など多岐にわたっています。
ジャケットやブックレットには,各国大使館のアンテナの写真も掲載されています(多くがいわゆる「ログペリアンテナ」です)。ブックレットには,ロンドン・ピカデリーの日本大使館の写真もあります。^^;

問題の"Yankee Hotel Foxtrot"の音源は,1994年に録音されたもので,Disc1のトラック4に4分半ほど収録されています。
音源は,2分ほど"Yankee Hotel Foxtrot"と延々繰り返した後,"Group one, zero. Group one, zero. Text. Text. Nobember(N), Lima(L), Sierra(S), Victor(V), Nobember,...."と聞き取れるものが収録されています。

(2005/04/09)

(c) 2002-2005 gota

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