片手にラヂヲ♪ ホーム短波ラヂヲの世界へのお誘い「楽器」としてのラジオ?!The Moscow Coup Attempt

作成日:2007/03/13

「楽器」としてのラジオ?!

The Moscow Coup Attempt

"The Failure of Shortwave Radio" (2005)

1. The Failure of Shortwave Radio pt. 1 / 2. Underground Sound / 3. What Is There Is There / 4. Ready Ready / 5. Phone Tap / 6. The Failure of Shortwave Radio pt. 3 / 7. Listening To Static / 8. Seduction of the West / 9. The Failure of Shortwave Radio pt. 2 / 10. End of Transmission
(Capitalist Records 40290-01)

これまた,全編に「暗号放送」の受信音を織り込んだ音楽だったりするので,たまりません。(^^;)
暗号放送を扱った音楽としては,Wilco "Yankee Hotel Foxtrot"(別項参照)という有名なものもありますが,こちらはアルバム全体,隅々まで使っています。

本作は,ロサンゼルスのプロデューサー,作曲家のDerek Whitacreによるもので,これがThe Moscow Coup Attemptとしての第1作となっています。
それにしても,ユニット名が「モスクワのクーデターの試み」,アルバムのタイトルに「短波ラジオの故障」,そして暗号放送とくると,なんとも壮大というか怪しげと言うか。(^^;)

ちなみに,この「暗号放送」のネタ元になっていると思われる,世界各地の暗号放送の録音を集めたCD4枚組 "The Conet Project"のDisc-3, track41に,まさに"Moscow Coup Attempt"と題されたトラックがあります。もしかすると,ユニット名の由来かもしれません。

ところで,本作のディスクのパッケージに,こんな謎めいた記述があります。

ENIGMA  Track#
E14
E36
E52
E101, 9, 10
E179
G17
G39
S25
V1 8

この"ENIGMA"の記号ですが,"The Conet Project"の解説によると,暗号放送の分類記号らしく,最初のアルファベットは使用言語で,"E"は英語,"G"はドイツ語,"S"はスラブ系言語,"V"はその他の言語,そして数字はそれぞれの分類を示すようです。
いずれにしろ,3曲目以外の全トラックで暗号放送の音源を使っているということのようです。

1曲目,冒頭からノイズ混じりの暗号放送の数字を読み上げる女性のアナウンスが聞こえ始め,それを背景に,King Crimson風のヘヴィーなギター,リズムに突入します。
このサイトでとりあげているラジオ絡みの音楽は,だいたいテクノ,アンビエント風が多いのですが,本作は全トラックを通じてクリムゾンの影響が色濃い,珍しいケースです。(よって,以後も何曲かでクリムゾン魂が炸裂するので,お楽しみに。^^;)

3曲目は,唯一暗号放送の音が使われていない,1,2曲目のクリムゾン風とうってかわった,静けさを感じさせる現代音楽風。
4曲目では,部屋の中で物音とともに暗号放送が鳴っているような音が織り込まれています。
7曲目では,チロル風メロディーが繰り返し聞こえますが,前述の"Conet Project"では,Disc3, track16に"Tyrolean Music Station"と題され収録されているものです。

ラスト10曲目の最後の最後は,暗号放送の"....end of message, end of transmission...."のアナウンスで電波が切れ,ノイズのみが残ったところでアルバムも終わります。

解説によれば,タイトルの「短波ラジオ」,そしてその「故障」(訳し方によっては「失敗」「失墜」でもありますが)とは,人間のコミュニケーションを象徴するもののようです。
しかし,アルバム全体のムードは,タイトルや素材といい,映画のサスペンスシーンを彷彿とさせるものがありますし,そういう楽しみ方も正解ではないかと思います。
実際,この作品には主にモノクロの古いフィルム(科学映画や戦争,ヒロシマの映像もある)で構成されたビデオ版もあって,さらに絶望的(?)な雰囲気を醸し出しています。(^^;)


[参考サイト]

(c) 2007 gota

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