片手にラヂヲ♪ ホーム短波ラヂヲの世界へのお誘い「楽器」としてのラジオ?!OMD

最終更新日:2010/04/06

「楽器」としてのラジオ?!

Orchestral Manoeuvres In The Dark (OMD)

"Dazzle Ships" (1983)

  • 1. Radio Prague / 2. Genetic Engineering / 3. ABC-Auto Industry / 4. Telegraph / 5. This Is Helena / 6. International / 7. Dazzle Ships (Parts 2, 3 & 7) / 8. The Romance of The Telescope / 9. Silent Running / 10. Radio Waves / 11. Time Zones / 12. All Of The Things We've Made / [extra tracks] 13. Telegraph (The Manor Version 1981) / 14. 4-Neu / 15. Genetic Engineering (312MM Version) / 16. 66 And Fading / 17. Telegraph (Extended Version) / 18. Swiss Radio International
  • イギリス盤CD Virgin CDVR 2261 (2008 digital remaster)

OMDは,80年代イギリスのエレクトロニックポップの代表的グループの一つ。代表作は,"Enora Gay"(1981, 2ndアルバム"Organization"収録)。

当時のOMDのアルバムは,ポップなもの,実験的なものを交互にリリースする様相を示していて,この4作目,"Dazzle Ships"は実験的な方に属します。
それにしても本作は,当時ヒットチャートを賑わせていたバンドとは思えないほどの,実験色極まった一作です。
ちなみにオリジナルLPは,当時OMDのアルバムを1stから手がけていたPeter Saville Assocoatesの,くり抜きの高水準アートのジャケット。

このアルバム,いきなり1曲目"Radio Prague"で,同局のオープニング(IS,開始アナウンス)の受信音を全くそのまま使って(よく聴くと,若干エフェクターがかかっている感じもする)アルバムのオープニングに使い,シングルカットされたポップな2曲目"Genetic Engineering"につないでいます。
余談ですが,当時NHK-FMの東京ローカルの番組「夕べの広場」で,この曲へのリクエストがかかって驚かされた思い出もあります。(^^;)
また,"Radio Prague"の番組の受信音は,3曲目"ABC-Auto Industry",5曲目"This Is Helena"でも使われています。

アルバムのInstrumsntsのクレジットを見ると,"Sanyo Short Wave Radio"とあり,さらに"<Radio Prague> and <Time Zones> arranged by OMD"とあったりします。

このアルバム中の6曲目,冒頭に短くラジオの受信音が聞こえる"International"は,当初もっと多くのラジオの受信音が使われていたそうです。国際政治をテーマに構想されていたらしく,短波ラジオの使用もこうしたテーマから導き出されていたようです。

セカンドシングルになった,これまたポップな4曲目"Telegraph"では,モールス信号が聞こえています。バンドの音に埋れていて,何を打っているのかはわかりませんが。
このモールス信号の音は,旧盤CD(CDV2261)でも聞こえることは聞こえますが,リマスター盤の方がわかりやすく聞こえます。リマスターの効用,こんなところにも。(^^;)

10曲目"Radio Waves"では,冒頭に細かくデジタルサンプリングされた,短波の音の断片が聞かれます。
アップテンポの疾走感は,Kraftwerkの"Airwaves"(別項参照)に似た感じもあって,もしかするとKraftwerkへのオマージュではと思えたりもします。
この曲は,OMDの前身"The ID"時代の曲ですが,"Radio Waves"の歌詞は,類例のないほどストレートなラジオ賛歌です。
サビのところは「電波には命がある,マシンも生きている,君と僕のために動いている」と,みんなみんな生きているんだトモダチなんだ状態です。(^^;)

短波ラジオのほか,当時使われ始めたサンプラー"Emulator"の導入のほか,サンプリング音源(いにしえのメロトロンも)の使用が目立ちます。
随所に"Speak and Spell" ("kind of permission of Texas Instruments Limited"とクレジットがある)の使用や,サウンドコラージュの7曲目"Dazzle Ships",6カ国の電話の時報サービスの音(日本のもある!)だけで曲を構成した11曲目"Time Zone"など,サンプリングサウンドの作品としては,かなり先を行っていたのではないでしょうか。

リマスター盤のボーナストラックの最後に,"Swiss Radio International"と題された,1分ほどのトラックが収録されています。これまた,当時の同局のオルゴールのISの受信音そのままです^^;。CDのシメとして,うまくはまっている感じもしますが…。

当時,この"Swiss Radio International",さらには"Radio Tirana"の音も使うつもりだったものの,諸事情で使えなかったそうです。もし,当初からこれらの音が使われていたら,アルバムの印象は変わったものになったでしょうか?
そして今,同局が2004年に放送を止めたおかげでこのトラックが日の目を見たならば,何とも言えない後味もします。(^^;)

リマスター盤の解説で,今なおグループの看板をしょっているAndy McClaskyが,本作をこう振り返っています。
「"Dazzle Ships"は,妙なアルバムで,明らかにこれまでリリースしたうちの,たぶん最低の売り上げのアルバムだけど,ひどく誇らしく思える。商業的には自殺のようなものだけど,然るべき理由で出したんだ。これには痛ましい美しさがあるんだ。」

そんなアルバムに,今ようやっと時代が追いついてきて,ポップに響くようになったのではないでしょうか。背景にある「冷戦」や「短波」は,忘れられてしまっているかもしれませんが。

(2003/01/05 一部改訂 2006/01/27,2008/12/21 全面改訂 2010/04/05)

[参考リンク]

Official OMD Website (英文)
http://www.omd.uk.com/
"Dazzle Ships"については,こちらに解説があります。
http://www.omd.uk.com/discography/albums/html/a_11.html


(c) 2001-2010 gota

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