片手にラヂヲ♪ ホーム短波ラヂヲの世界へのお誘い「楽器」としてのラジオ?!Nicolas Collins

最終更新日:2016/07/23

「楽器」としてのラジオ?!

Nicolas Collins (1954-)

"Devil's Music" (CD version 2009)


  • 日本盤CD Em Records EM1086DCD
  • 2CD
    • [CD-1] 1. Devil's Music A (18'46") / 2. Devil's Music B (edit from 1986 LP) (16'33") / 3.The Spark Heard 'Round The World (previously unissued) (25'28")
    • [CD-2] 1. Real Landscape A (26'04") / 2. Real Landscape B (25'47")
    • [CD-Extra Program] Software For Performing Devil's Music / Video-1. Devil's Music Live

サンプリングした,ごく短かなラジオの音をループにしながら,音を少しずつ変えていくミニマル的な音楽。
このCDに収録された作品は,1985年から1988年にかけて制作されたもの。

作曲・演奏のNicolas Collinsは,1954年ニューヨーク生まれ。
サウンドアートの鬼才,Alvin Lucier(1931-)に師事しています。
音を生成するシステムを重視する作風は,師匠譲りといえそうです。

Collins氏は,ラジオを音源に選んだ理由を「世界で最も安価であり,しかも強力なシンセサイザー」だからとしています。
一方で「自分のお望みのサウンドが必要な瞬間に得られるかどうか」が問題だとし,「パフォーマンスが成功するか否かは,ローカル局の絶対数と局のバラエティーと個性に多くを負う」,「もちろん,運次第」ともいいます。

CD1-1,2."Devil's Music"は1985年に録音され,1986年にLPで発売されたもの。
タイトルの由来は,「当時,ポップ・レコードにおける卑猥な歌詞や隠された悪魔的なメッセージに先入観を抱き,偏執的になりつつあったキリスト教右派への私からの軽い返事であった」そうです。

音素材になったラジオは,音色からFMとAMが混在しているのがわかります。(短波の音はなさそうです。)
1.はダンスミュージック局,2.がイージーリスニング・クラシック局のチャンネルとのこと。
もっとも,どちらも暴力的な響きもあって,とくに1.はJohn Oswaldの"Plunderphonics"も思い起こさせます。
ただ,聞いているうちにリズム感,音色に詩情のようなものが感じられるようになってきたりしますが。(^^;)

奏者はラジオのダイアルを回しながら音素材を探し,それを1秒以下の長さに切り取りループし重ねられ,音程を変化させます。
ラジオの音は,ディレイ機能のあるサンプラーに取り込まれ,さらにお手製の"どもり回路(stutterling circuit)"で,単調な繰り返しにならないような加工もされています。

当時のサンプラーは,今とは違い数秒しかサンプリングできなかったのですが,それがサウンドのカラーを決めているのも興味深いところです。
2002年の"Devil's Music"復活のためのソフトウェア制作でも「私はプログラマーが誘惑されがちな回路の"改善"という典型的な行為に屈することなく,オリジナルの回路が持つくせや限界を出来る限り忠実に再現することに心血を注いだ」としています。

CD1-3.は,"Devil's Music"以後もラジオの音に心を惹かれ続けたCollins氏が,どこを旅するにも持ち歩いていたマルチバンドの小型ラジオで録音した音源から構成された,1988年の作品。
実演用ではなく「テープ作品」とのこと。
"Devil's Music"に比べて,サンプリング時間がずっと長めで,変化もゆったりとしています。
こちらは「短波度」が高く^^;,短波で聞こえる各種信号音のほか,当時のRadio Canada InternationalやRadio France Internationaleの放送開始前のシグナル(IS),"Radio Svoboda"(ロシア語のRadio Liberty)のアナウンス,Radio Moscow Worldservice,さらにはnumber stationの暗号らしい音声も聞き取れます。

CD2-1,2. "Real Landscape"は,1987年のニューヨーク,ブタペスト,ベルンなど7都市での公演から編集された音源で,1988年に力セットテープで限定発売されたもの。
タイトルは,同様にラジオを音源としたJohn Cage "Imaginary Landscape No.4"(別項参照)を意識したものだそうで。(^^;)

音的には,1."A"は"Devil's Music"とほぼ同様の手法です。
2."B"も同様ですが,ラジオから聞こえる人の声を中心に構成されている感じです。
2.では,冒頭いきなり"Stockholm"という女性の声が,短波のノイズとともに2分間ループになっています。(もしかして,Radio Swedenのアナウンス?^^;)
そして,ラストは爆竹のような破裂音っぽい音の連続で終わり。

余談ですが,CDのインナースリーブには,"Devil's Music"を演奏した1980年代当時の機材の写真があり,サンプラーやディレイにつながっているラジオは,懐かしの「BCLラジオ」"Panasonic RF-B60"だったりします。^^;


[参考サイト]


(2016/07/23)

(c) 2016 gota

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