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[収録CD] 音の始源を求めて 3/佐藤茂の仕事 (国内盤 Sound3 OUOADM0501) |
これまた,まったく文字通り"放送"が音源で,しかも,ある1日の20時間分のNHKのラジオ放送を丸ごとダイジェストにしたという,恐るべき作品です。@_@; 篠原真は,1950年代からヨーロッパに渡り活動している現代作曲家で,Stockhausen(別項参照)の助手を務めていたこともあります。電子音楽作品も多く,ほかにも国内盤CD(「電子音楽の領域/篠原眞作品集II」カメラータ・トウキョウ 30CM-455)が出ています。 この作品は,氏が日本に帰国した際「NHKの放送を聴き,その現状をコラージュの手法で表現しようとした」,つまり,作曲家がドキュメンタリー的発想で作ったものというわけです。 "Broadcasting"では,1日20時間放送しているNHKの中波2波,FM1波の放送を完全録音するため,6台の録音機と100本に上るオープンリールテープを準備,2人が1日に20時間,1時間ごとにテープを替えて連続録音し,さらにそれを編集するという,途方もない労力が費やされています。A^^;; そうしてできた作品ですが,例えば最初の30秒は,こんな音が聞こえます。
音は,オーバーラップしながら,出たり消えたりしていますが,同時に音が重なるのはせいぜい3つ程度で,さほど錯綜した絡み方はしていません。モジュレータやテープ速度などの変調が軽くかかった音はありますが,ほとんどの音が明瞭に聞き取れます。 CDでは,冒頭6秒目(CDでのタイミング,以下同じ)に,上記のとおり朝5時のものと思われる時報が聞こえますが,さらに1分目にも「NHK東京FM放送,JOAK-FM」と,朝6時開始のFM放送のアナウンスが聞こえます。 以後,聞こえてくるものは,音楽,語学講座,ラジオ体操(朝6時半頃にあたる1分36秒と正午過ぎと思われる7分10秒頃にきっちり出てきます^^;),ニュース,天気予報,株式市況,教養番組,大相撲中継,子供番組,交通情報....。 選択されている音には,結局のところ,その日,その時に放送されたものという以外,意味づけらしきものはさっぱり感じられません。 また,1973年の放送(おそらく「1月11日」の放送)を音源にしている割に,時代を感じさせるものは希薄です。ちらほらと,ニュースで「田中総理大臣」とか,相撲中継の力士名,懐かしいアナウンサーの声も聞こえますが....。(それとも,NHKは30年経っても変わってないということでしょうか?^^;) 基本的には,ニュースのような時事的内容を含んだ音があっても,細かい編集や音の組み合わせもあり,作品がストーリーを持った"ドキュメンタリー"にはなっていません。そういう意味では,音楽らしくなっています。 聞き通すと,朝5時から午前0時まで,本当に20時間ラジオを聞ききったような,妙な感覚に襲われます。いやいや,疲れたとか苦痛だとか言うんじゃなく^^;,違った言い方をすれば,観衆参加のコンセプチュアルアートにつきあった感じとでも言いましょうか。A^^; ラスト,19分5秒に時報,そしてテープをやや遅回しにした,放送終了時に流れる「君が代」が聞こえ,19分25秒に3局の局名アナウンスが一斉に重なって流れ,19分34秒のNHKラジオの一日は終わります。 [参考文献]
注.作曲家の名前の漢字「真」については,収録CDの標記にしたがいました。ただし,他の資料等では「眞」としているものも多いです。情報を検索する際は,ご注意ください。 |
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