片手にラヂヲ♪ ホーム短波ラヂヲの世界へのお誘い「楽器」としてのラジオ?!Luctor Ponse "Radiophonie I-a"

作成日:2005/09/09

「楽器」としてのラジオ?!

Luctor Ponse (1914-1998)

"Radiophonie I-a" (1968,電子音楽:6分)


Luctor Ponseは,このサイトで紹介している他の作曲家に比べると,日本での知名度はずっと低いのですが,"Radiophonie"と題された一連の作品を残しています。

Luctor Ponseは,1914年10月11日,スイス・ジュネーブ生まれ。フランスで少年期を過ごし,音楽教育を受けています。1936年,オランダ・アムステルダムに定住し,作曲家・現代音楽のピアニストとして活躍しました。作品のほとんどは,オーケストラや器楽のためのものですが,1960年代後半には数々の電子音楽の傑作を生んだことで知られるオランダ・ユトレヒトの"Institiute of Sonology"に所属,いくつかの電子音楽を残しています。

"Radiophonie"は,標題のもの以外に,"I-b" (1968,3分),"II" (1969,28分), "III" (1969,15分)が作られています。
ただし,残念ながら電子音楽作品は,LP,CDともにほとんどレコード化されていないようです。(T_T)
唯一,1970年頃に仏Philipsから出ていた"Prospective 21e Siecle"と題されたLPのシリーズ中の1枚に"Radiophonie I-a"が収録されています。現在入手が非常に困難なシロモノですが,今回幸いにしてその音を聴く機会があったので,記事にしてみました。A^^;

"Radiophonie I-a"の音源は全て短波ラジオ,しかもデータ通信の受信音です。

短波をざっと聴いたことのある方なら,放送の合間の周波数で「ピロピロピロピロ....」といった意味不明な音を聞いたことがあると思います。
短波には,このような画像や文字などを送るデータ通信の電波が出ています。これを普通のラジオで受信すると,特徴的なごく短いトーンのリズミカルなシークエンスとして聞こえるというわけです。
この作品では,こうした様々なパターンのデータ通信の受信音を組み合わせています。

それにしても驚くのは,こうした音を重ねる以外には,電子的変調などの加工がほとんどされていないことです。
しかしよく考えてみると,ラジオの音,ことにデータ通信の受信音はもともとシンセティックな音なので,あえて手を入れることもないのでしょう。(^^;)

曲の長さは6分強,3分半目あたりを境に2つのパートに分かれている感じです。
曲の初めに「ピーピーピーピーピーピー」と聞こえる,典型的なデータ通信のリズミカルなシークエンスが聞こえてきます。そして,それは曲の前半3分半まで持続します。
その上に,様々なパターンのその種の信号の受信音が重ねられていきます。重ねられる音数はそれほど多くなく,せいぜい同時に3つ程度です。
重ねられる音の中には,ラジオのダイヤルを動かして音程を変化させている音や,モールス信号もところどころで聞こえます。
前半が穏やかな展開のアダージョ(緩徐楽章)なら,後半は音量も前半より大きくなり,変化も激しいプレスト(急速楽章)のような感じです。

短波のこの種の音を,素材がわかる形で使った作例としては,William Basinskiの諸作(別項参照)を思い起こします。しかし,それにしてもこの作品の音は,短波ラジオから聞こえる音そのまんまです。元の短波の音がほとんどわからない,Tod Dockstader"Aerial"(別項参照)とは好対照でもあります。

全体の作風は,John Cage(別項参照)のような即物的な感じも,Stockhausen(別項参照)の神秘性も感じられません。
ただし,素材の音のリズム感を活かすアイデアの明確さ,そのアイデアを形にできる作曲者の力量は感じられます。さながら,短波のエチュード(練習曲)の味わいでしょうか。

この曲を最初聴いた時は,ラジオの音そのまんまやん^^;,と思ったりしましたが,前述のような構成に,聴かせどころをおさえた巧さも感じたりします。(^^;)
この作品を聴くと,普段短波ラジオを聞いていて,何気なく通り過ぎていたデータ通信の音が,なんとも音楽に満ち溢れて感じられるようになります。(^^;)

それにしても,これほどのラヂヲネタ音楽がほとんど音盤化されず,現在に至ってもほとんど聞く機会がないのは,まったくもって残念です。"Radiophonie"全作品のCD化,激しく希望します。(-人-)


[参考リンク]

(2005/09/09記)

(c) 2005 gota

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