片手にラヂヲ♪ ホーム > 短波ラヂヲの世界へのお誘い > 「楽器」としてのラジオ?! > Tim Hecker "Radio Amor" |
1. Songs of the Highwire Shrimper / 2. (They Call Me) Jimmy / 3. Spectral / 4. I'm Transmitting Tonight / 5. 7000 Miles / 6. Shipyards of La Ceiba / 7. Careless Whispers / 8. Star Compass / 9. Azure Azure / 10. Trade Winds, White Heat
[CD: Mille Plateaux MP119]
Tim Heckerは,カナダ・モントリオール出身の電子音楽家。キャリアは,2000年頃からテクノ+ヒップホップのプロジェクト"Jetone"に始まり,数作のソロ作品を出し現在も活動中です。 作風の特徴は,リズムもメロディーもなく,長くたなびかせた電子音の上に,細かくサンプリングされループにされた楽器の音などが入ってくるものです(そのスジで言うところの"アンビエント・エレクトロニカ"とでも言えば良いのでしょうか)。 "Radio Amor"は,Heckerさんが南米ホンジュラスを旅した際,行動を共にしたエビ漁師の"Jimmy"にインスパイアされたもので,曲のタイトルからもそれは窺えます。 本作はタイトルから想像できるとおり,ラジオのノイズがアルバム全体を特徴づける音になっています。 1曲目"Songs of the Highwire Shrimper"は,冒頭から静かにラジオのノイズが聞こえはじめます。やがて,オルガンのようなごく短い音の繰り返しが被ってきます(これは,Heckerさんの音楽のランドマークとも言うべき音です)。ラジオのノイズの中には,変調がかかった人の声らしきものも少し聞こえます。 3曲目"Spectral"も,冒頭に変調された人の声らしき音が聞こえはじめ,長くたなびく金属的な電子音にかき消されていきます。その間も,ピリピリ言うノイズがかすかに聞こえています。 続く4曲目"I'm Transmitting Tonight"は,たなびくオルガンのような音を基調としていて,曲全体が音量オーバーしたように歪んでいます。本作中一番ラヂヲっぽいタイトルの曲ですが,その手の音はトラックの最後になって無線の交信のような音が出てきて,5曲目"7000 Miles"につながっていきます。 ラスト10曲目"Trade Winds, White Heat"は,「キーン」という音をともなったチューニング音に導かれ,柔らかなオルガンの音のリフレインが奏でられます。その間も,背景でかすかに無線っぽい音がしています。最後に長くたなびく電子音がフェードアウトした後,かすかな無線の音を残してアルバムは終わります。 本作でのラジオの音は,このサイトで紹介している他の作品のように,聴いてすぐそれとわかるものではありません。モチーフとなったラジオの音は,単なる素材というよりは,ごく精神的な象徴として禁欲的に扱われている印象さえ受けます。アルバム全体に,空気のように存在するラジオの音とも言えるでしょう。(この点,Tod Dockstader "Aerial"[別項参照]の作風も思い起こされます。) [参考サイト]
"Tim Hecker / Radio Amor" Reviewed by Michael Heumann http://www.stylusmagazine.com/review.php?ID=1559 (2005/08/07)
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