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"The River"(1983)(ドイツ盤:Raster-Noton 番号なし, 2CD)*
* 2007年秋に自身のレーベル"2062"から再発予定とのことです。
短波の音を素材に,テープループでの音の繰り返しで構成された,90分の大作。 音楽の中の「短波の音」は,いわゆるテクノの分野で多く聞かれます。たいていそこには,StockhausenやHolger Czukay,あるいはCageら先達の影響が強く感じられます。 本作はそんな中にあって,短波のノイズが大河の水にきらめく陽光の輝きのように感じられる,希有な美しい作品です。 Basinskiは,短波で聞こえる各種信号音など短波のノイズ(人の声や楽音などは極力避けている)のシークエンスを選び,ループにして重ね,通奏低音のように作品を貫いています。 (その音のたゆたいかたは,シンセ物が好きな人には,Klaus Schulze"Cyborg",Tangerine Dream"Zeit",あるいは"Solaris"のサントラあたりに近い線,というと,わかってもらえるかもしれません....) Basinskiの短波の音の使い方には,偶然性の要素はなく,ある種のミニマル音楽のように,素材の「繰り返し」の力だけで音楽を構成している風でもありません。 では何なんだ,と言われてしまいそうですが(^^;A,Basinskiは短波の音を,ごく客観的に音響としてとらえ,自分の表現,イメージに合ったものだけを,慎重に選び抜いているようです。短波ラジオをシンセサイザーのように使っていると言ってもいいでしょう。 Basinskiが自己の音楽活動を始めた70年代後半,高価だったシンセサイザーの代わりに,テープレコーダーを使い始めたというエピソードは, そんな方法論の出発点とも言えそうです。(私事ですが,同じ頃,貧乏学生だった筆者も,シンセの代わりに短波ラジオで「音楽」を作って遊んでました。 ^^;) よく「電気の音は冷たい」「人の手を通せない」などと言われますが,この作品はそうした考えを覆してくれます。長い作品ながら丹念に作られ,音一つ一つが美しく,彫琢の極みです。(^^) "Shortwavemusic"(1982)(米国盤:2062-Musex International 2062.0701)*
1. Evening Scars / 2. Cobalt Pools / 3. Fringe Area / 4. On A Frontier of Wires / 5. Particle Showers
* 2007年発売のCD。1997年にtrack1-4がLPで,Raster-Notonからリリースされていた。
"The River"に先行して制作された作品。 強いて言えば,1曲目"Evening Scars"に,他の作品との微妙な違いを感じます。 "Shortwavemusic"全体的には,ゆったりとした"The River"に比べ,展開がやや速く感じられるところはあるかもしれません(もっとも,曲は各5分〜23分と"The River"よりは短いのですが)。 ちなみに,Raster-Norton盤CDのジャケットはほぼ同じもので,真ん中を丸くくりぬいた白地の紙のスリーブに,淡い色で緩やかに横に流
れるサインウェーブの組み合わせのみ。インレイカードもなく,"The
River"には解説もありません。さらにはCDのレーベル面の印刷さえ最小限です(うっかりすると,プレイヤーにセットする面を間違えそうです)。 [参考CD]"Shortwavemusic"の8分半ほどの抜粋が収録されたオムニバス盤。ただし,上記Musex盤に収録されていないミックスのようです。 [参考サイト]Basinskiが設立した実験メディアの会社のサイト 本作をリリースしているRaster-Notonのサイト Basinskiの詳細な紹介と映像作品"Disintegration loop 1.1"(Quicktimeムービー 64MB!^^;)を (2003/02/22記 改訂 2003/09/09 2007/06/14) |
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