片手にラヂヲ♪ ホーム短波ラヂヲの世界へのお誘い「楽器」としてのラジオ?!Jon Appleton

最終更新日:2004/07/18

「楽器」としてのラジオ?!

Jon Appleton (1938〜)

"CCCP (In Memoriam:Anatoly Kuznetsov)"

(テープ音楽/1969/5分)
[収録CD]
John Appleton "Contes de la memoire"
(カナダ盤CD empreitentes DIGITALes IMED 9635)

この作品は,当時,ソ連から西側に亡命した作家,Anatoly Kuznetsov(1929-1979)に捧げられ,「モスクワ放送」Radio Moscow (現「ロシアの声」Voice of Russia)英語放送の受信音が主な音源となっています。(「BCL」の皆さんになじみやすそうな?作例でしょうか。^^;)

作品は,冒頭から「モスクワ放送」のIS「祖国の歌」のチャイム音が流れます。続いて,"Good Evening, Everybody!"と男性アナの堅い声,周波数のアナウンスも聞き取れ,当時の放送がしのばれます。周波数アナウンスの途中,音はKuznetsovの亡命を伝えるニュースになり,作品制作の動機がここで示されます。
それにしても,これほど短波放送の受信音をストレートに使ったほかの作例は,OMD"Radio Prague"(別項参照)くらいしか思いつきません。

それに続いて,Kuznetsov本人・トルストイ・スターリンの声,ロシア民謡などの音源が変形され,電子音とミックスされたりしていきます。
このあたりは,亡命の背景や,おそらく亡命者が感じていたであろう望郷の念などが語られているかのようです。

そして,3分30秒あたりで再びKuznetsov亡命のニュースが流れ,ドアを閉じるような音,電子音,変調されたロシア民謡が静かに流れ,最後は電子音のシークエンス(何かの音を変調した音?)で作品は終わります。

全体を聞きとおすと,この作品がきわめて「物語的」だということがわかります。他のAppletonの作品も,多かれ少なかれ「物語」を感じさせられるものは多いです。この作品での「モスクワ放送」は,その物語のアウトラインを押さえる役割のようです。

また,Appletonはロシアとの交流もあるようで(彼のルーツ絡みもあるようだ),こうしたロシア絡みの作品は他にもあり,"Dima Dobralsa Damoy"(1993,7分)という,民族音楽をネタにした曲もあります。

余談ですが,他の作品でのAppletonは,むしろユーモアのセンスを感じられるものが少なくありません。
同じCDに収録された曲では,"Andrew Sisters"の歌う"Chef-Boy-Ar-Dee pizzas"のCMソング(!)を加工した作品,"Chef D'oeuvre"(1967)にそんなセンスを感じます。
また,日本との関わりも深く,慶応大学に客員教授として呼ばれていたこともあり,"Degitaru Ongaku"(1994)なんてタイトルのコンピューター音楽もあります。


[参考サイト]

* 作品で採り上げられているAnatoly Kuznetsovについては,1929年8月18日ウクライナ・キエフ生,1979年6月13日ロンドン没,作品に"Babi Yar : a documentary novel" (translated by Jacob Guralsky, Dial Press, 1967)という程度の情報があります。


(c) 2001-2005 gota

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